「無期転換ルール」と「雇止め」

「無期転換ルール」と「雇止め」

労働契約法第18条「無期転換ルール」施行時から懸念されていた、無期転換回避のための有期契約労働者への「雇止め」が増加していることが表面化しました。厚生労働省が6月下旬に公表した「平成29年度個別労働紛争解決制度」によりますと、民事上の紛争と思われる約30万件のうち、1万4千件が雇止めに関するものであり、前年を約2千件上回っています。また、都道府県労働局長による助言・指導実施件数約1万件のうち、700件強が「雇止め」の問題でした。前年まで500件余りでしたので29年度に急増したことになります。

具体例も示されており、15年間契約更新していた有期契約労働者が29年中の更新時に、新たに契約上限30年3月31日で雇止めする旨の説明を受けた。新たな労働者を雇い入れている部署もあるため、雇止めの撤回を求めたいと助言・指導を求めたケースでは、①長年にわたり契約更新を続けていることや29年契約更新時まで契約期間の上限について雇用契約書に記載はないことから、労働契約が更新されるものと期待することについて合理的理由があると認められる可能性があること、②労働契約期間の上限の設定が無期転換ルールの適用を意図的に避けることを理由としているのであれば、その雇止めは、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない可能性は否定できないと考えられることから、雇止めについて改めて話し合うよう助言・指導があった。この助言に基づき、再度話合いを行い、事業主が雇止めを撤回し、雇用が継続されることとなった。このように有期契約労働者の雇用安定に資するための「無期転換ルール」が、逆に雇用の継続を阻害することになりかねない現状があります。無期転換申込権が発生する前に雇止めすることは、労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではないため、慎重な対応が求められます。

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